last modified:2007.05.10
人間コミュニケーション学科・専攻 Human_Communication
 
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photo   科学技術コミュニケーション学講座
社会コミュニケーション学講座(専攻)
教授
  中島 義道

NAKAJIMA Yoshimichi
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科学・哲学・コミュニケーション

 科学とは何でしょうか?そして科学と哲学とはどんな関係にあるのでしょうか?私の研究テーマはこの問いに収斂されます。科学の追究するものは真理です。しかし、哲学も真理を求めます。真理とは何でしょうか?それは「科学的真理」に限られません。多くの人は真理を科学的真理と同一視しておりますが、それは相互主観的真理と言いかえることができます。つまり、同一の状況において、ある人Aの観察結果や推理結果が他の任意の人B、C、・・・の観察結果や推理結果と同一であるという要求の上に成り立っている真理、言いかえますと観察者や推理者があくまでも交換可能であるような真理です。しかし、こうした要求があらゆる真理に妥当するわけではありません。例えば、自然保護に関して、あなたが独特の優れた洞察を抱いているとしましょう。この場合、あなたが宗教的確信や芸術的陶酔にとどまるのではなく、真理を求めるのなら、あなたは他人とのコミュニケーションに踏み出さねばなりません。自己確認で終わってしまうのではなく、他人を自分の信念のもとに暴力によって屈伏させようとするのでもなく、無数の他人との対等なコミュニケーションを開始しようとする開かれた態度を持たねばなりません。しかし、この場合、あなたが相互主観的真理(=科学的真理)に達することはきわめて稀でしょう。

科学批判と人間コミュニケーション

 真摯なコミュニケーションを遂行しても、すべての人が一つの結論を共有できるとはかぎりません。いつまでも、人々のあいだの差異が残るほうが普通です。こういう状況のほうが人間が心理を求めてコミュニケーションを開始するとき生ずる普通の事態なのです。科学的真理とはこういう事態を切り捨てて、各人が相互主観的に一致するはずだという理想状態を想定しているだけです。

 ここに、科学的真理とは異なる哲学的真理の世界が開かれます。「哲学」とはフィロ(知)=ソフィア(愛)の訳語ですが、この場合の「愛」とは知が大好きだという意味ではなく知に恋い焦がれるという意味です。知に恋い焦がれるのは、われわれが知にまだ(そしてたぶん永遠に)至りえないから、知を所有していないからです。ですから、哲学者とは「愛知者」であり、すでに知を所有している「知者」ではありません。各人がみずからの固有性を消去することなく、しかも普遍性をめざすという態度のうちに「哲学的真理」は開示されます。そして、まさにこうした哲学の原型概念が人間コミュニケーションの理念と重なるのです。

 具体的には、とくに倫理的な場面を考えてみればいいでしょう。科学に対する批判は、科学の内部では達成されません。例えば、クローン人間を作るべきか否かは、科学的客観的真理によって答えられるものではなく、価値観や感受性や道徳観の異なった個々の人間同士の絶え間ないコミュニケーションを通して追求され続けるものです。すべて科学についての議論は、科学の枠を越え出て、つまるところ「人間とは何か?」」「善とは何か?」という問いにさかのぼり、この問いに科学は回答を与えることはできません。

異文化理解と人間コミュニケーション

「人間とは何か?」「善とは何か?」という議論を始めますと、文化的背景を共有する者同士より、文化的背景を異にする者同士はさらに対立します。ここで、異文化理解という大きな問題が生じてきます。その場合、互いの文化を尊敬しその差異を確認して済むというわけにはいきません。人権や生命や自然保護など、文化的相違を撤廃しても統合してゆかねばならないものもありましょう。しかしこの場合、往々にして優越した文化(欧米文化)が他の文化を暴力的に支配するかたちで、統合がなされてしまうのです。こうした暴力的統合をいかにして避けるべきか、いかにして健全なコミュニケーションを保つべきなのか、いかなる事柄に関してむしろ各文化の差異性を尊重すべきか、等々はきわめて重要な問いです。私はドイツ語も担当しておりますので、こうした観点から異文化理解に関わるコミュニケーションにおけるさまざまな困難についても考えてゆきたいと思います。

 また、人間コミュニケーションとは言語コミュニケーションだけではありません。同じように重要なコミュニケーションとして身振りや表情といった非言語コミュニケーションがあり、これらがまさに文化によって大きく異なっているのです。

            *     *     *

 こうして、現代において、科学的方法によって答えを出すべき領域とそうではない領域とをはっきり分けることは、緊急かつ重要な課題です。この人間コミュニケーション学科は、まさにこの課題に取り組むものです。科学に対する健全な信頼を持ち、かつそれを批判的観点から見ることができるような人間を育成したいと思います。

 

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